2013/06/26

夜をひとりで


 横断歩道の向こうに偶然、君を見つけた。
 信号が青に変わるまでの間、避けられたらどうしよう、とか気が付かれる前に立ち去るべきかなとか考えたりして。
 君は気が付いてたのかな。わからない。
 結局僕は、その場に立ち竦んでいた。

 会いたくない
 会いたい
 会いたかった

 心が暴走してる。

 信号が青になって、君が歩いてきて、何年も会ってなかったことなんて嘘みたいに、すごく自然にお互い笑顔になって、それから、手を繋いだ。
 君の手、だった。他の誰とも違う。愛おしくて切なくなる。



 夜をひとりで歩く。
 持て余した手をポケットの中に突っ込んだ。
 会いたい
 会えない
「もう会えない」
 僕のひとりごとが、夜の中に消えていった。

2013/06/21

雨が鳴るとき


言葉を失い
次を見つけようともせずにサヨナラ告げる

振り返ることもせずに揺れるスカートの裾


足音を失い
錯乱の花から情を奪ったのはここに在るとき


腐乱の花が乾きを奪う
靴底の下で

2013/06/20

綴時ᵀᴼᴶᴵ


青の奥を伝う。

誰かの。
どこかと。

同じ色を刻む。

2013/06/03

(XVIII.月)嘘月


陽が落ちて影が消えたとき
涙が堕ちて愛が朽ちたとき
嘘に塗られた月が僕を刺す

星たちが瞬き
滅びゆく肉体を哀れむ

どうか酷薄に
どうか美しい塵となれ