2014/01/28

人間格子


生きている限り、苦しいのだ。


雨が鳴る。
途切れることなく僕を削る。
生きていく限り、続くのだ。
僕の削りかすが、わずかに僕語る。

2014/01/10

(XVI.塔)細氷



いちばん高いところへ行こう
ぐんぐんのぼって行こう
虹を蹴飛ばして
雲を通り抜けて
月の先を齧って

たどり着いたそこは暗い闇で花が一面に咲いていました

咲いては散り
キラキラと音が響いて
咲いては散り
生まれる音と死ぬ音

塔はまだ続いていました
見上げると海が広がり時折波が力強く渦巻いていました
下を見るとかすかな光が塔を照らしていました
その時気付いたのです
虹を蹴飛ばしたはずの足がありませんでした
月を掴んだはずの指もありません
僕は死んでいたのでした
戻れば僕は生き返り
進めばまた生まれ変わるのでしょう

どれくらい考えたのかはわかりません
ここには時間がありません
とても長い時間だったのかもしれないし
一秒も考えなかったのかもしれません
僕は花の中へ飛び込みました

花片は割れガラスのように鋭く冷たく
僕の気配を切り刻みます
キラキラと響く花の音はまるで僕の死の音でした
これまでの人生の中で一番素敵な音を奏でているような最高の気分です
なぜか君の声を思い出しました
「生まれ変わったらまた一緒だよ」


ずっと後悔してきました
君から離れる選択をしたことは間違いでした


どれくらい眠っていたのかわかりません
ここには時間がありません
たどり着いたそこは白い闇で雪が一面に咲いていました
僕は結晶の一片となって静かに舞い降りていました
なぜか君の声が聞こえました
「ゆき」

広げた手のひらの上で
僕は涙となり
そっと零れてゆくのでした