いつの間にか
雪が死んでいた
鏡面に映る私は
醜くも春に立つ
喧騒が遠巻きに聞こえる
同じ空間にいるのに
私だけ隔離されているよう
グラスに遮断された珈琲みたいに
私もこの身体に閉ざされている
私が私を壊せば
違う自分になれるのか
それともそのまま消え失せるのか
苦みすら残せない私は
そっと耳を塞ぐだけ
まだ5月ではないのにと訝しがりながら
言葉に意味など含めない
愛は無用な装飾であり
感情は不要だと言い聞かせる
十字架を赤く染めて壁に掲げた
垂れたペンキに哀を課せる
独りで生きることの確信を産み
何者でもない僕を模る
此世に自分など含めない
もう戻ることはない
最後の雪を手のひらで受け止めた
悲しみも何もかもすべて
時間とともに過去へと流れゆく
雪の涙が地上に落ちるころ
私はもう歩き出している
時間とともに未来へと