2016/04/04

カサつくふた


記憶の隅が
カサブタの端みたいに
少しだけめくれている。

あともうちょっと我慢すれば
綺麗に再生できるのに。

剥離損ねのカサブタの裏ながめて
悔しい気分で記憶巻き戻す。

ザラつく画像は不明瞭に滲み、
それを舐めたとき気付くんだ、
舞台から誰もが離反していることを。


僕は独りで演じているだけに過ぎなかった。


降りる幕の端から、
広い会場の隅で無関心に拍手をする自分が見えた。


また、カサブタが出来た。