2018/06/14

届かぬ黒は遠く


深淵から黒が堕ちて
どこまでもどこまでもそれは堕ちて

僕ヲ 取リ残シテユク




冷厳な黒に触れたくて
指先を伸ばしても

2018/06/13

【℃anDie】

 


 世界が死んだ



  蟲螻むしけらのようなビルを眺める

 

 あの明かりも欲しいものではなかった


 ホシイモノがなんだったのかさえうまくいえない



 蟲螻の中には欲望が蔓延していることだろう



 それらを奪い取り

 蟲螻に寄生する人間どもの口の穴に詰め込んでやれば

 欲望など塵屑程度の物だと思い知るだろう



 思い知るがいい

 この世界は死んでいる




2018/06/12

回青橙


たとえ飛べたとしても
君と繋がっている空のあの向こうには行けないの

僕の皮膚に記した君の名前を剥ぎ取って
君との刻んだ時を破り捨てたとしても
僕が僕を捨てたとしても
空は変わらず回り続ける

夜と朝が交代するとき
オレンジ色の空が僕を見捨てて
きれいな地球が回り続ける

2018/06/11

scope


もう少し先へ歩いて行けるのなら、空が青く見えるかもしれないのに。

相変わらず僕の景色は赤みがかった灰色で、怖くなって引き返す。

玄関の鍵を閉めるとき、
その音を聞いたとき、
価値の軽さを知るんだ。

玄関を無駄に埋め尽くす靴の価値、閉め切った部屋に淀む空気の価値、炊飯器にこびりついている干からびた一粒の米の価値、布団の圧縮された綿の価値、
僕の価値。
鍵を閉めるカチという音とともに。

2018/06/09

食えない音


伝えたいのはこんなヒズみじゃない。


だけど
アンプを通り抜けるとき、
肉を挽くみたいなミンチさでばら撒いてしまう。



たやすく
それは振り払われてハンバーグにもなれやしない。



夕方の片隅、赤染みた床の上で肉片は眠り就く。




夢の中で音が鳴る。



夢の中でなら伝えられるのに。
このゆがみの不味さを的確に。




2018/06/07

痛みに縁取られた空白(夢)


蛆虫の夢を見た。
蛆虫は出てこないけれど蛆虫に怯える夢だった。
俺はきっと怖いんだ。
本当は脳の中なんて空っぽで
本当は全身が空っぽで
何もないんだ。
ずっと脅かされている。
もしかしたら見るものすべてが…




何もない。
俺ハ空白ニ彩ラレタ殻ノ屍。




あな には見えて るの?
  た ち 本当にい  ?





俺は生 て  。