2018/06/11

scope


もう少し先へ歩いて行けるのなら、空が青く見えるかもしれないのに。

相変わらず僕の景色は赤みがかった灰色で、怖くなって引き返す。

玄関の鍵を閉めるとき、
その音を聞いたとき、
価値の軽さを知るんだ。

玄関を無駄に埋め尽くす靴の価値、閉め切った部屋に淀む空気の価値、炊飯器にこびりついている干からびた一粒の米の価値、布団の圧縮された綿の価値、
僕の価値。
鍵を閉めるカチという音とともに。