
眠るのが嫌い。
怖い夢ばかり見るから。
バクは、夢なんか食わない。
怖い夢を見させて、僕を喰う。
夢に怖がる僕を楽しんでいる。
子どものころ、僕は見たんだ。
暗闇の中にバクがいた。
黒い体で、目を光らせたバクが、ドアの出入り口を塞いで僕を見ていた。
体の周りも目と同じ色で光っていた。
僕は怖くて声をあげて泣いた。隣で寝ていた母親と姉が起きて、僕はバクの説明をしたけれど、そんなものいないと笑われた。
おそるおそる確かめると、暗闇だけが僕らを見ていた。
僕はどれくらい、ちっぽけなおとなになっただろうか。
今日も僕は、バクの餌になる。

.jpg)