2022/08/07

THEATER


玄関のコンクリに染みた水滴は
まだ乾ききってはいない
その表面は小さな花に似ている
夏、水辺で揺れていた

駅前のコンビニで買った紅茶は
まだ飲みきっていない
この表面に書かれた成分表を
飽きることなく見ていた

浮遊する僕の心が沈むまで


暗闇を削る四角の画面に
上映された僕の人生は

色無く
音無く
つまらなく
静かに始まり静かに終えた

僕はどこにいたのだろう


コンクリの水滴が乾いて
紅茶を飲み終えたとき
冷たい床が僕の行方を憂う


遥かなる心音を殺せと