どんなに鮮やかな色を魅せようとも
影は滲みていく
使い古しのエンジンこぼしたみたいに
なんの感情も無く
私はこの町を発つのだ
胎児のころと同じ
なんの感情も無く子宮の壁を見つめ
ただ通り過ぎるだけ
どんな人生を新しい町で歩もうとも
時はオイルのように迫り
劣化した私を回収するのだろう
いつまでも残る
鳴り響く音階
色褪せた記憶
あの時言えなかったことを
時経る今なら
確かな言葉で伝えられるのに
蝶の軌跡が壊れゆく
描いた空には
羽の欠片さえも見つからないほどに
濃い碧を重ねる
時経る今なら
確かな別れを告げられるのに
コンペイトウを散りばめて
名もない星座を描く
ある星は粗末な絵を
ある星では雑音止まず
ある星は罅割れ
ある星の傷は膿む
ある星は無常を吐露し
ある星は雪の物語を綴る
それらは、一度も輝くことなく流れる
やけに甘い粒が
やけに虚しく舌を這う
コンペイトウを飲み込んで
何もない空の下で
揺れるカーテンの向こう、
垣間見えた空には雲ひとつなく、
まるで私の思い出箱のようにからりとしていた
味のしなくなったガムを銀紙に包むころには、
空の色さえ、忘れている
そこには死しかないと思っていた。
痛みも感情もすべて消え失せ、
なにも無いことが死なのだと。
なにもかも無くなりたいと。
今の私はそうであっても。
花は枯れようとしていた。
それなのに、強く、息吹いていた。
意味のある死を以って。
私を浚う雨の響きは、
無意味な羅列に似て。