2022/09/29

【嘔 吐 吐 書】


   ちぎれた音を聴いた
   何もかも吐き続けて
   大切なものまでをも
   奪われていくような

   胃液の底に沈むのは
   ちぎれた音、でした


   葡萄を摘んだときの
   音にも似たかすかな
   悲鳴が聴こえました


   咀嚼した実はやがて
   空になった私の中に
   束の間の幸を与えて
   生にしがみつく私の
   しぶとさを褒め称え

   まだ生きている事の
   過ちを嘆くのでした