2014/12/23

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実証がない。
私が私で在ることの。
このニクタイはなんだ。
このニクタイは腐敗しゆく物だ。
朽ちる音が波打つ。
私であるものが排除されてゆく。


確証がない。
あなたがあなたで有ることの。
あなたは。
あなたも。

…あなたも。

いづれ消滅してゆく者にすぎない。



私はそっと耳を澄ました。
アナタタチノ重ナルホウヘ。
朽ちる音が波打つ。



そうしていつかなにもなくなる。


すべて

2014/12/07

右脳のタクラミ


アオッチョロイ空に残る飛行機雲の切り取り線をハサミで切って、そうっとめくったら、左脳が隠れていた。

誰だ、こんなところに隠したのは。

いいかい、君はひとりでは生きられないのだ。
左脳がいて、僕がいる。

なんだって?
待ってくれ…
置いて行かないでくれ…

おい、左脳までどこに行くと…いうのだ…
僕は空っぽになっちま…う

ぼく…わ、、


だれでした?

ぼくわ、からっぽでした。

2014/11/07

偽終止


虚ろなメロディに


不規則な言葉あてがって

真実を隠した


このうたが届いたなら
私を軽蔑していい




ふたりの間には

何もなかったと



はじめから何もなかったと



私はもう何も無い・・・

2014/10/26

(き)りとりぃ



僕を切り取るもの。

僕の心まで奪うにはあとどのくらい?

いつしかすべて喰い千切られて

僕が僕でなくなるまで、




君を想う。

地獄クッキング「ケ血ャップライス」(夢)


鉄格子を舐めると、錆とも血ともとれる味がして、口端を拭った手の甲にケチャップとも血ともとれるカスが付着していた。
汚れとも血ともとれるカスを服の裾に擦り付けまして、鉄格子の尖った先で白と黄のマーブル模様のベールを少しだけ剥がしまして、覗いてみると、そこに現れたのは蛆虫だった。大量の。
たまらなくそばに佇んでありました液体を飲み干した。
勢いをつけすぎたせいで、野菜ジュースとも血ともとれる滴りが零れ落ちました。
地獄とも現実ともとれる味がしました。

2014/09/18

つぶれる


水飛沫の音を聞いた
確かめたかったのだ
愛という感情を切り離したかったのだ

不必要な感情を
飛沫のひとつひとつに閉じ込めたかったのだ

たったひとつの感情を
たった一つの飛沫に託したかっただけなのだ
それだけなのに


たったひとつのひとつぶも見つけられない


僕の感情はたんなる液体にさらわれてしまった



僕は哀という感情を失ってしまったのだ

2014/09/11

Break Everything


何を探している
何を感じている
笑うことをやめた日から
失うものなど何もなかった

探しているものを忘れてしまうほどなら
この手に必要なものではなかったのだろう

異質なノイズがチラついて
いびつな錠剤を飲み込んだ
理屈も屁理屈もすべて

目を閉じて、無を探す
無を感じる
失うことをやめた日から
笑うものなど何もなかった

2014/08/09

人喰うバク


眠るのが嫌い。
怖い夢ばかり見るから。
バクは、夢なんか食わない。
怖い夢を見させて、僕を喰う。
夢に怖がる僕を楽しんでいる。

子どものころ、僕は見たんだ。
暗闇の中にバクがいた。
黒い体で、目を光らせたバクが、ドアの出入り口を塞いで僕を見ていた。
体の周りも目と同じ色で光っていた。
僕は怖くて声をあげて泣いた。隣で寝ていた母親と姉が起きて、僕はバクの説明をしたけれど、そんなものいないと笑われた。
おそるおそる確かめると、暗闇だけが僕らを見ていた。



僕はどれくらい、ちっぽけなおとなになっただろうか。
今日も僕は、バクの餌になる。

2014/08/04

宛無き旅(受信編)


どんよりとした輪郭を、冴えない頭でぼうっと見つめる。

 コンクリートの海にいた。
 どんなにもがいても進めない。
 もうすぐ私はカタマリになるのだ。

カタマリ。

手の中の感触を確かめると携帯電話だった。
夢と現実のハザマからようやく抜け出る。
カタマリはメールを受信していた。

開くと見慣れない文字が羅列している。

 納屋へ鉈良き日な赤
 棚か中は荷や他
 ゆわひ気圧に湯張る皿
 やなやらへなき矢を高菜は、由良は抜きと床や他
 塚な秋菜由な夜話な
 奈良原や和や中

件名には「文豪」と書かれていた。
そっと消去した。

私は現実の中で迷子なのだ。

2014/08/03

宛無き旅(送信編)


 ふと目が覚めて、手探りで携帯電話を掴む。
 時間は午前三時九分。
 視界を奪うほどの眩しさに、一瞬目を細める。

 小説を書こうとメール作成を開いた。とりとめのない言葉や、夢で見たことなど何かしら残すのが癖になっている。

 気付くと、ただ漠然と白い画面を見つめていた。
 何も出てこないのだ…

 出鱈目にキーを押して変換した。


 あてずっぽうな文字で画面を埋めると、歴代の文豪気取りで満足して目を瞑る。

 私は再び夢の中を彷徨うのだ。

2014/07/23

サカアガリ


今日、地上に残された足跡を蹴りました。
君の残した足跡だったと思います。

チカチカと星が瞬きました。
君との思い出だったのだと思います。

回転中の空に、君とふたりで最後に見た色を塗りました。


あのときのアメアガリの青は、もう見つからない。

2014/07/13

145gの呼び出し


休日なのに出掛けなくちゃならないこの状況

重い

服が重い

上着が重い

マスクが重い

帽子が重い

ブーツが重い

ドアノブが重い

鍵が重い

ガチャリと閉めたドアの向こうから

ケータイの着信音が軽やかに鳴る


2014/07/02

僕を。


心地の悪さは、目から入ってくる。
耳から入ってくる。

目を塞いでも、
耳を塞いでも。

肌で、
毛穴で、
全身で、
気配で、

拒否してます。あなたは。

2014/06/20

虚構と現実の蓋の裏で



俺は殺したい


頭痛と吐き気を



こんなときだけ
生きていることを
実感しなければならないのか


便器の中が
嘔吐物が
リアルで


リアルの入り口で
腕に刻んだ君の名を握り締めて
ゲロと一緒に涙が堕ちる


ちくしょう
ちくしょう
ちくしょう


こんなときに
リアルを垣間見る俺を


俺は殺したい

2014/06/17

夜ヲ死ス


頭ん中何かに蝕まれて
痛みだけに支配されて
もうてめえは終わりだと司令官が 夜ヲ差ス
暗い孤独の底で 吐瀉物に溺死ス



 

2014/06/09

カリカリざむらい


“Alesana”を聴きながら、コーンフレークを食べました。

“As You Wish”のメロディを飲み込みました。

なぜだか心の奥が痛みます。

チョコレート色の甘い思い出が心の奥底を痛ませます。

もう従わないと決めた日から、ふやけすぎたフレークを食べるのはやめました。

寂しさの硬さを噛み締めて、独りで生きてみせる。



2014/05/24

きっと虫食い


息が、し難い。


踏みつけられた落ち葉のような感触で、

私の心は、かさついて。

2014/05/13

無 刺 糸 線


蠢く血の行末に心従う

鼓動が逸り時が鳴る


誰のために
何のために
傷付けるの


千切 れ   る

2014/04/22

きのうのこと


俺の腐脳の収脳は底尽きてるけど
無脳にはなりたくないから脳ト開いて
かたっぱしから文字書いて埋め尽くす。
こ脳えから重要な言葉に赤ペンでしるし付けて
心の準備がトト脳まで続ける。
不可脳と言われようと
理解不脳と言われようと構わない。

2014/04/20

200リットルの狂言


ともかく、頑丈で感情の無い入れモノがほしい。

この皮膚は卑屈で窮屈で

傷付けるにはやわらかすぎる。

もっと頑丈で強靭な入れモノを。

2014/04/04

朽チス蝶


誰ニモワカラナイヨウニ
誰ニモ愛サレナイヨウニ
孤独ノ心ヲ泥デ汚シタ

剥がれゆく鱗粉は
私で、私ではない、
それでも私、なのか…

自由トイウ名ノ窮屈ノ檻デ
存在ノ価値ヲ問ウ

壊れゆく私は
私であったもの…

2014/03/14

苦味


平気な振りをしていないと
自分を保てないから

汚れた羽を纏って
嫌われものになる




正体 identity

2014/03/03

冷却じぇるしーとの夢


脳ヲ揺ラス蟲ノ波動ガ痛イ。
目頭ヲ抑エテ指先ノ冷タサヲ知ル。
冷酷ナ俺ノ温度。
感情ノ無イ波動ヲ

俺は放ちている。



貴女ヲ傷付ケル為ニ。

俺ニ巣食ウ蟲ヲ貴女ニ寄生サセル為ニ。



2014/02/26

Straw


この
取るに足りない世界の中
誰にも侵入できない色を乞う
誰にも見えない声を産ぶ


隔たりの向こうで輝く
あの菫のように
あのなな色の虹のように
彩ることができたなら


それでも視界を黒で塗り
まだ
黒を求めている私がいる
誰にも侵入できない色を乞う
誰にも見えない声で今際を叫ぶ

2014/02/14

■MOSAiC□


カクシンつく口、塞いで。

ザラツクココロ、隠した。

カナシイココチ、揺れる。

触れられたくない誰にも。

2014/01/28

人間格子


生きている限り、苦しいのだ。


雨が鳴る。
途切れることなく僕を削る。
生きていく限り、続くのだ。
僕の削りかすが、わずかに僕語る。

2014/01/10

(XVI.塔)細氷



いちばん高いところへ行こう
ぐんぐんのぼって行こう
虹を蹴飛ばして
雲を通り抜けて
月の先を齧って

たどり着いたそこは暗い闇で花が一面に咲いていました

咲いては散り
キラキラと音が響いて
咲いては散り
生まれる音と死ぬ音

塔はまだ続いていました
見上げると海が広がり時折波が力強く渦巻いていました
下を見るとかすかな光が塔を照らしていました
その時気付いたのです
虹を蹴飛ばしたはずの足がありませんでした
月を掴んだはずの指もありません
僕は死んでいたのでした
戻れば僕は生き返り
進めばまた生まれ変わるのでしょう

どれくらい考えたのかはわかりません
ここには時間がありません
とても長い時間だったのかもしれないし
一秒も考えなかったのかもしれません
僕は花の中へ飛び込みました

花片は割れガラスのように鋭く冷たく
僕の気配を切り刻みます
キラキラと響く花の音はまるで僕の死の音でした
これまでの人生の中で一番素敵な音を奏でているような最高の気分です
なぜか君の声を思い出しました
「生まれ変わったらまた一緒だよ」


ずっと後悔してきました
君から離れる選択をしたことは間違いでした


どれくらい眠っていたのかわかりません
ここには時間がありません
たどり着いたそこは白い闇で雪が一面に咲いていました
僕は結晶の一片となって静かに舞い降りていました
なぜか君の声が聞こえました
「ゆき」

広げた手のひらの上で
僕は涙となり
そっと零れてゆくのでした